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36 チャイコフスキー雑感

バレエファンにとってはあまりにお馴染み、言わずもがなの作曲家。「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「くるみ割り人形」という三大バレエの音楽を生んだまさにその人。交響曲などでは耐えられないほど美しい旋律を聴かせるこの作曲家の音楽をピアノ弾きである私は知ってるようで実はそれほどに知らないのではと、ふと思ったのでした。

私にとってのチャイコフスキーは自分がバレエに関わるようになってからもバレエの作曲家というよりは、実はバレエとは少しばかり違った位置にいつも存在していたような気がします。していたような、という頼りないこの言葉はそういえばよく考えてみたらこういうことだったのかもしれないということなのですが・・。

子供の頃から受け手として親しんでいた音楽としての「白鳥の湖」。幻想的で時に感傷的ながらも溢れる何かを押さえ切れないでいるようなこの音楽と、同じく色々な形でしばしば目にしていたバレエの作品としての「白鳥の湖」が自分の頭の中でもうひとつしっくりと一致していなかったような感覚なのです。

この曲をストーリーを意識しながら捕らえるようになったことは恥ずかしながら比較的最近になってからのことです。バレエ作品として全体像を知ることで曲への理解も深まるとは知りつつも、私の中ではどうやらこの劇音楽も劇抜きで既に完成された絶対的な音楽として受け止められていたようです。

常に音楽先にありきの音楽人間的感覚のようとも言えますし、チャイコフスキーの音楽が踊りや物語の存在を超え得る完成度を放ってるゆえとも言えるのかも知れません。
視点を変えると、バレエの世界の人が「チャイコフスキーは踊りにくい」ともおっしゃるそのあたり、この私の頭の中でのバレエと音楽の「バラバラ事件」と無縁のものではないのかもしれません。

それはさて置き、ごく私的なチャイコフスキー体験を語るに欠かせないのが
まず弦楽四重奏第1番の2楽章、いわゆる「アンダンテ・カンタービレ」、「ヴァイオリン協奏曲」そして「弦楽のためのセレナーデ」。
特に前者2曲は幼児体験として有無を言わせず染み付いている音楽です。

それにしても、こうして並んだ三曲を見て、おや?とお気付きになられた方もいらっしゃるでしょう。アナタ、ピアノ弾きじゃなかったの?あの名曲、チャイコのピアノコンチェルトはどこへ行ったの?・・・うーん・・どこへ行っちゃったんでしょうねぇ、まったく。

勿論、チャイコフスキーのピアノ曲が嫌いだなんてことは、小指の先の爪の垢ほどもないのですが、私の中ではチャイコフスキーの音は管弦楽、特に弦楽器の音色の美しさに心震わせられるものなのです。
「アンダンテ・カンタービレ」の持つ、吹雪の夜に暖炉の火を見つめながらおばあさんの昔話に耳を傾けてるような暖かさも、ヴァイオリンコンチェルトの冒頭のヴァイオリンソロに導かれる繊細かつ勇壮な世界も、春浅く、雪がとけ、凍り付いていた河が一気に流れ出し、光が洪水のようにふりそそぐかのあの「弦楽セレナーデ」も。
理解するというにはあまりに幼い頃の音楽体験ではありましたが、ソノシートの雑音だらけの録音にかじりつくように聴いていたチャイコフスキーとの出会いはおそらくそのまま弦楽器の美しさとの出会いでもあったのかもしれません。

スケールの大きなコンチェルトの他、よく知られたピアノ作品に「四季」があります。全12曲の一曲ずつにこの作曲家のリリシズムや背景となるロシアの風土のようなものを強く感じる作品です。それにしても、音楽としての魅力はあるものの、ピアノ曲としての手応えはと言うなら、もうひとつ楽器との相性は良くないという感じが残念ながら先に立ってしまうものです。
そもそも譜面から聴こえてくる音色が私には管弦楽の響きになってしまいます。それに近付けてピアノで弾こうとするのは譜ヅラほど簡単ではない、と言うところです。音に表したいのだけれど、ピアノに向かううちに歯がゆくてたまらなくなる、そんな感じ・・・です。

チャイコフスキーがもう少し弾きやすく響きの良いピアノの小品を沢山書いてくれたら、あの繊細な旋律を存分に弾けたのに・・。
秋空にくっきりと浮かぶ月にそそのかされるまま、とりとめもなくチャイコフスキーのことなど書いてみました。

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