稽古場のピアノ バレエピアニストの世界 WEBサイト
ご使用中のブラウザのJavaScriptをONの状態に設定してください。
稽古場のピアノ
ブログ稽古場エッセイピアノ教室リサイタルお役立ち情報

プロフィールリンクお問い合わせホーム

ホーム > 稽古場エッセイ > 過去の記事リスト > 過去の記事

稽古場エッセイ 過去の記事過去の記事リストへ戻る

33 気になる音

聴いた音楽が耳について離れない。ずーっと同じ旋律が頭の中で繰り返し流れ続けている・・。耳の敏感な人、音楽に職業的に関わってる人ならこんな経験をされてる人は少なからずいらっしゃるでしょう。
ちなみに本日の私の耳は朝からしばらく「ライモンダ」。神経のか細さゆえでしょうか、しつこい性格ゆえでしょうか、自分の弾く曲はもとより、ピアノの生徒がレッスンで弾いてる曲やら、CDで聴いた気になる曲やらへたをすると延々同じ曲の同じフレーズが頭の中で繰り返し繰り返しエンドレス。と、そこまでいかなくても、頭の中で鳴る音楽としばし同居し続けなければならない時があるのはどうも避けられないようです。

バレエの振り付けを考える時もそれこそイヤという程何度も何度も何度も何度も同じ曲を聴き、カウントを数え・・・という作業に没頭すると聞きますが、頭の中に舞台をひとつどーんとかかえこむのですから、音が鳴り照明が当てられ何人ものダンサーが頭の中で行ったり来たり・・しかも創作の過程ではやはりおんなじ箇所を繰り返しあーだこーだ。想像するだに妙なハイテンションに陥りそうです。

そんな風に常に音に接している人にとってはちまたで流れてる音のひとつひとつがちょっとでも気になりだしたらもう大変。
バレエピアニストなどそれでなくとも悲しい習生、音が鳴るとどんな場でも耳は即座に反応。名付けて「この曲使えるかな症候群」。初期症状としてはまず喫茶店などでも店内でかかっている音が妙に気になってしょうがない。コーヒーを飲む手をふと止め、この曲フォンジュで使えるかな?・・1と2と・・と数え始め、頭の中でステップを思い浮かべる症状が出てきたらかなり進行してるはず。そのうち手をひらひらとさせ、ステップの動きを真似て動かしは始め・・。既に慢性化してるバレエピアニスト諸氏も多々いらっしゃるかと思うものです。

ちょっと耳を澄まして聴いてみようという気にさせる音楽ならばともかくも、まるで風がそよと吹いても痛みを感じてしまうほどに繊細で敏感な耳の持ち主にとってはこの世は騒音に満ちています。目は閉じればとりあえず見ないで済みますが、耳の場合ある程度選択して聞き分けているとは言え、突然、予告なく飛び込んで来る音は時に暴力的とさえ言えましょう。ここに行くとこんな音が聴こえると知っていて、あらかじめ準備が出来ていてもやはり苦痛でしかない時もあるものです。

その苦痛な音の筆頭にあげられるのが駅の構内で聴こえる音。苦手なのは私だけではないはずです。音が本当に大切な合図となる人のためにももっとシンプルにならないものかと思うものです。
特に山手線など都心のホームで聴こえてくる音。ホームがいくつも並んでいる大きな駅などではいったいどれだけの音が鳴り響いているでしょう。しかもどうひいき目に見ても決して美しい音とは言えない音が・・。
人の数の多さから自然発生する音だけでも相当な音量でしょう。そこに発車の合図のメロディー、さらにベルの電子音も加わり、「危ないですから下がってください!」「駈け込み乗車は危険ですからやめてください!」の駅員さんのがなり声(失礼!)、加えて「まもなく3番線に電車が入ってきます」の録音の声・・・あっちのホームからもこっちのホームからもひっきりなしに聴こえるこれらの音、音、音。

思い浮かべるだけでくらくらしそうです。おまけに発車の合図のメロディーが聴こえるたびに反射的に頭の中で音名をなぞって歌ったり瞬間的に鍵盤を浮かべては弾いてしまい、そんな自分に疲れてしまう人も中にはいることでしょう。ちょっと限られた人かもしれませんが、そんな敏感な耳の持ち主は「炭鉱のカナリア」のような状態にならざるを得ないくらい街に溢れる音は刺激的です。

望まずに飛び込んで来る音に慣れっこになってしまいたくないものです。自分の感性をすり減らさないためにも、他人の感性を受け止めるためにも。
でも、自分で出しているピアノの音も聞く人の立場によっては実は騒音に他ならないということはやはり肝に銘じておかなければ・・・。

ページトップへもどる


Copyright (C) 2001-2009 Hisari-Isoyama. All Rights Reserved.