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27 アイスクリーム

昨日久しぶりにちょっと美味しいアイスクリームを食べました。スーパーで簡単に手に入るものですが、密かにご贔屓さすがの紀ノ国屋フーズと申しましょうか、小ぶりで品のいい大きさのアイスもなか。たしか店頭には「あずき」、「バニラ」など3種類ほど並んでいたと記憶してますが、そのうち私の手が伸びたのは「抹茶」。買ってくださいましと熱い視線で見つめられ、つい誘惑に負けました。アイスクリームの。

買い物袋からいそいそと取り出し、手のひらサイズの小さな袋に収まってるもなか。ちょっと失礼と皮の蓋を開けて覗いて見ますと中身のアイスの色がなんとも涼しげな緑。お味の方も抹茶そのもので甘さも軽く、控えめに、でもどこか毅然と主張するお茶のほのかな苦味もとても美味。ハーゲンダッツやフォションのアイスクリームが油絵の具を幾重にも重ねて塗られた洋画の味だとしたら、紀ノ国屋の「抹茶」は色の名前も萌黄色とか橙色などと漢字で表される日本画のようなお味。

もなかは「サクッ」とも「もたっ」ともどちらともつかない食感とおまけに味も素っ気もない中途半端な皮の存在が今ひとつ許し難くて敬遠しがちでした。が、この紀ノ国屋のアイスもなかは袋の表示によると皮にこだわりの美味しいお米が使われているらしく、しっとりしていてオヤ?と思わせるものでした。皮の味というほどのものではないのですが、美味しい水を口に含んだ時に微かに感じる甘味のようなものがあり、ちょっとご機嫌にさせてくれます。

・・・と、おもいっきり紀ノ国屋の宣伝みたいになってしまいましたが、アイスクリームというと真っ先に思い出すのが子供の頃神社のお祭やお花見の時にいつも欲しくて欲しくて食べたくて食べたくてたまらなかった屋台のアイスクリーム。もはや消え入りそうな記憶の隅っこにある味ですが、舌に触れた時のシャリッとした感触と冷たさは今食べてるかのようによみがえります。

懐かしの屋台で売られていたそのアイスクリームは、生クリームなどをふんだんに使ったバニラアイスクリームともフルーツ味の爽やかな香りのするしゃきっと美味しいシャーベットとも遠く及びのつかないものです。駄菓子の袋に見える氷菓という文字がむしろぴったり来るような、当時流行りの人口甘味料が使われていたらしいややもすると薬のような甘さです。
しかもいちご、メロンとは名ばかりの、ピンクや薄緑のおそらくは食紅で着色された果物風味は今思うと相当胡散臭いものです。まさしく縁日の味です。そしてそれが美味しかったのです。

春の桜祭りの妙な熱気の中、喉が渇いたと小声で言っては遠まわしにねだって買ってもらったアイスクリーム。人込みの中をハタをひらひらさせた小型の屋台を引いて歩く白いシャツ姿のおじさんに声をかけると、アイスボックスの蓋を開けてパリパリした固いコーンを片手にシャリシャリのアイスをへらですくっては押し付けるように小さな山を作ってくれます。あたり一帯むっとする程の満開の桜の花は狂気に近い迫力があるものです。その樹の下で酒に酔い、宴に興じる人々に圧倒されながらひとくち口に含む冷たいアイスクリームは大人達の宴とは別世界への誘いでした。ひとついくらぐらいだったでしょうか・・30円くらいのものだったかどうか・・昭和40年代前半の記憶です。

さて、乳脂肪分たっぷり、こくのあるアイスクリーム。特に外国ブランドのラムレーズンなどなかなか強力な甘さにほっぺたがとろりと溶けそうです。暑い時も美味しいものですが真冬の寒さの中部屋をガンガンに暖かくして食べたらじわりエネルギー源になって元気が出てきそうです。

で、元気の出るアイスクリームといえばこれ。ちょっと目先の変わったところでアイスクリームの天ぷらの登場。

なにそれ?最初にその存在を知らされた時はただただびっくりのひとことです。信じられません。アイスクリームというのは周囲の温度が上がったら溶けてしまうものです。どうしてそんなものを加熱して天ぷらに出来るのでしょう?
しかも天ぷらと言えば普通はご飯のおかずです。アイスクリームがおかずになるかといえば・・・答えは言わずもがな。

天ぷらの素材といえば茄子や椎茸、しその葉などの野菜、海老やイカやキスといった新鮮な魚介類・・それにとろりとろける冷たいアイスクリーム? やはりアイスは仲間はずれになってしまいます。同じ土俵で勝負するものではないはず・・。どうにもピンと来ません。スシ、スキヤキ、テンプラの日本人としては断固許しがたい感覚です。お醤油風味のおだしのきいた天つゆや旨みをたっぷり含んだ塩でいただく天ぷらの中身が何ゆえアイスクリーム?なんでわざわざ揚げなきゃならんのだ?
ミスマッチの面白さを味わうには勇気と時間が必要でした。

でもこれこそ百聞は一見にしかず。手放しでほっぺが落ちそうに美味しいかというとそうとも言い切れるものではないのですが、尾を引く、癖になる・・・。一度食べたらどうももう一度食べたくなる、実際食してみるとそういう類の美味しさでした。

個人的にはやはりお酒などをいただきながらの食事の真っ最中にはちょっと控えたいですが、天ぷら屋さんで野菜や白身魚などお好みで揚げてもらいながらもうそろそろお腹いっぱい・・という頃にひょいと出されると、弱いところをちょんちょんとくすぐられてしまう感じです。これは女性にとっては別腹メニューなのです。目が覚めます。

きちんとお皿に盛り付けられたアイスクリームの天ぷらはちょっとロッテの名作「雪見大福」を髣髴とさせる風情です。ちょんちょんと箸でつつくと天ぷら衣の中身に冷たいアイスクリームがまあるく形を整えたままでお行儀よく顔を覗かせます。口に含むとやはり衣をつるりと脱いで表れるのは紛れもないアイスクリーム。衣にくるまれたアイスクリーム・・・?
そうです、アイスクリームの天ぷらはもなかのアイスクリームのバリエーションだったのです。

ちなみに紀ノ国屋の「アイスもなか」は一個150円。

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