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15 絵の具箱

夏のバレエピアニスト講習を受講したその帰り道、知り合って間もないとあるピアニストがふと漏らした言葉。 「バレエピアニストって演奏者の個性で弾くものだと思っていたんです・・。」
おや?このことばの後には、「でも・・」という前提を軽く否定するおはなしが続きそうなニュアンス。個性で弾くものかどうかって・・個性って、そりゃ個性は個性で天は個性の上に人を作らず個性の下に・・・いやいや、どんな場で弾くにせよまあ色んな意味を含めての個性が反映されてこそのピアノの演奏でしょうけど・・うーん・・・じゃあ個性じゃない部分で弾くってどういうこと?

バレエの稽古場でのピアニストの音楽的個性っていったいどういう風に表現されるものでしょう?或いはされるべきものなのでしょう?

では実際に今バレエの稽古場で弾いてるピアニストっていったいどういう音楽歴の人がいるかというお話から。
まあ、間違いなく言える音楽的共通項は、ピアノを弾ける人だということ。そりゃそうです。そんなこといちいち説明しなくたって当たり前。が、この「ピアノを弾ける」にも十人十色、実に様々なのです。独断と偏見を駆使し、私の伺い知るところでごくごく大雑把に分類してみるならこんなところでしょうか。

  • その1、音大ピアノ科出身、正統的クラシック伴奏者系ちょっとお嬢様はいってますピアニスト。
  • その2、音大作曲科出身、音楽理論追求及び創作系こだわりばりばりピアニスト。
  • その3、バレエ出身ピアノも弾けちゃう踊って弾けるピアニスト。
  • その4、出所不明好きならなんでも弾いちゃう柔軟剤たっぷり仕上げは柔らかピアニスト。

1番のクラシックのピアノをしっかり勉強してきたタイプ。ピアノの先生と呼ばれ、声楽やヴァイオリンなど様々なクラシックの分野での伴奏を手がけたりすることも。
こちらは演奏する曲を練習しておき、稽古場に沢山の楽譜を抱えて準備し、必要に応じて楽譜の中から曲を選んで弾くタイプでしょうか。即興による演奏はどちらかというと控えめ。
楽譜を読んで弾くという育ち方が基本にあるため、例えば原曲の楽譜に書かれていない音を動きにあわせて追加しちゃったりなんていうことには罪悪感すら覚えることも。曲の終わり、手がブラバーのポジションになったのに合わせチャラ〜ンなんてさもありなんという和音をわざわざ加えて弾くなど、ぞぞぞ・・・だったりするわけです。演奏曲目はシューベルトやツェルニー、シューマン、などの抜粋の他クラシック全般の名曲アレンジ、バレエ音楽などが中心といったところでしょうか。

2番の作曲家系ピアニストになると1番のタイプとほぼ共通した生育歴をもちつつも、もう少し現代的なセンスの選曲になったり、バレエピアニストとして進化を遂げたその暁にはバレエのための自分の作品を弾いたりも。本来はオーケストラの曲であるバレエ音楽を楽譜無しでばりばり弾いちゃうのはどちらかというとこのタイプでしょう。旋律に対してその場で伴奏を即興的につけたり、ポピュラーを含む新しい音楽を取り込むセンスに長けているので応用力もある反面、理論を駆使し自己の音楽を徹底的に追求し今が旬の形にするのが本業だけに、動きと音のあわせ方など納得がいかないとピアノの前で固まってしまう・・・かも。

さて、3番。踊って弾けるピアニスト。これは理想といえば理想でしょう。どういう音楽がどういう動きに合うものなのか身を持って知っています。ただし、バレエに大きくシフトして過ごしてきた方の場合、ピアノの腕を改めて磨かなければならないこともあるでしょう。そしてこのタイプの場合、演奏の合間にピアノを離れ、さっきまで鍵盤においていた手をバーに乗せ変え、ペダルにおとなしく乗せていた足はぐいっと高く上げられてストレッチ・・・なんてことも。

4番の出所不明系。バレエのピアノの世界、ピアニストを雇う側であるバレエ学校やバレエ団の側は「○△音大××科卒、ウィーンほにゃららセミナー参加、そのへんのコンクール入賞、名だたるなんたら先生に師事」といった音楽歴はまずほとんど問題にはしないでしょう。そうすると逆に実力勝負、弾けるが勝ちの世界でもあるわけです。クラシックというよりはジャズばりばりであったり、レストラン、結婚式などでのBGM系の音楽を武器に自分の得意な分野を弾きまくる、即興で全て通す、或いは楽譜がよりどころのクラシックの分野出身でも演奏会ではどうもはみ出しそうな一癖もふた癖もあるマイナー系のものにこだわった選曲だったり、はたまた、流行りもののJ−POPから演歌、巨人の星までなんでも楽しく弾いちゃう御仁も。

バレエピアニスト入りの箱の蓋を開けたらびっくり、赤、黄、青、緑・・・その中にさらに桃色、えんじ色、空色、群青色、若草色・・・。

とまあ好き勝手にバレエピアニストの大雑把な音楽的カラーの違いを分類してしまいましたが、それぞれの色を少しずつ混ぜあわせたり抜いてみたりしながら、稽古場でいい味わいの色を出してダンサーに受け入れられ、時にはその場を染めてしまうのがベテランバレエピアニストの表す個性なのかもしれません。

では、稽古場では受け入れられ難い音楽的個性というのは、さて・・・?

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