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8 ピアノの椅子から

ドガの踊り子」と言えば、きっと誰しもあの今にもふわりと跳び出してきそうなバレリーナの絵を思い浮かべることができるでしょう。
フランスの画家、エドガー・ドガ(Edger Degas1834−1917)はパリ・オペラ座の楽屋やバレエ団の稽古場に通い、多くのバレリーナのスケッチを描きためたといいます。バレエの瞬間の動きがくっきりと切り取られ、その上に画家の眼で見た動きの本質というものが描き込まれます。

バレエが人間の動きを追求することというなら、ドガの絵はその動きを画布の上でさらに突き詰めたものでしょう。ドガにとってバレリーナというのは他の動くもの(例えば馬のような!)と同様、「動き」を表現したいがための興味を引くひとつの題材に過ぎない・・・そんなこともこの画家は言ってるようです。
でも、そんな冷静な画家の眼は稽古場でのありのままの踊り子の姿を不要な誇張もなくくっきりと写しています。
ある者はバーの上に片足を乗せ、ある者は鍛えられたしなやかな足を惜しげもなく広げて座り、片隅ではバーに手を乗せたままお稽古そっちのけでおしゃべりに夢中になり、衣装をまとってアラベスクをするその足はバレリーナにあるべき筋肉がしっかりとついて。

そんなドガの絵に見られる踊り子たちは、そのまま今の時代のお稽古場にそっくり移し変えられます。クリックしてつまんでそっくりそのまま貼り付け!一気にタイムスリップしても片隅のピアノの椅子に座って見える稽古場の風景はあの絵のひとこまそのものです。ピアノを弾く合間に、そして演奏するためにピアニストの眼に映るのはあの絵の中の「踊り子」達の姿そのものです。

ドガの絵と違うことといったら、多分こんなところでしょうか・・・・。
お稽古を終えてほっとし、手にしたキティちゃんのタオルで汗を拭き、片手でバレエシューズを脱ぎながら出て行くバレエ学校の生徒達。
21世紀の稽古場で彼女たちがくすくす小声で笑いながらおしゃべりしてるのは「ねえねえチャコットのシューズって・・」「来週から期末テストなのぉ、どうしよ〜」「○○ちゃんてコンクール受けるんだってぇ、すっご〜い」・・・。

入れ違いに姿を現わす次のクラスの小さな踊り子達はそれぞれにレオタードを整え、小走りに駈け込みながら結いあげた髪の毛のおだんごに手を添え、ほつれないようにキュッとピンで留め直し。
大きな鏡の前にしゃがみこんでバレエシューズにきちんと足を収め、先生の視線を少し気にしつつ、レオタードの上にはおったカーディガンを脱ぎ、レッグウォーマーをはずし。
うつむき加減になって鏡と視線を行ったり来たり忙しく走らせては、さっき食べたばかりのおやつのケーキの行方を確かめるようにお腹のふくらみ具合に手を当て、そしてぐっと引き締め。

稽古場を見渡すと、屈託なく笑い、伸びやかに手足を動かす素敵な女の子達の存在が風景のようにも見えてきます。でも、時に涙もこぼれる小さなドラマがピアノの椅子からしっかり見えることも・・・。

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