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7 Allegroは軽やかに

湖面をいともたおやかに過ぎていく白鳥。水中でひっきりなしに動かされてる白鳥の足元にはバレエでいうアレグロのステップの原型を目にする思いです。ただしそう、あくまであのパタパタは原型です。舞台のダンサーは見事に磨き抜かれた軽やかな足さばきを披露し、あたかも水面を移動するが如く印象を与えてくれるのです。それがバレエでいうアレグロのステップですから。そこに見るのはあくまで美しい4羽の白鳥の姿です。

バレエの稽古場ではアッサンブレ、ジュテ、アントルシャ・・横に滑るように、軽い跳躍をしながら・・・でも全身の姿勢は安定し、正面にむけられたその顔は足元の動きが複雑なことなど微塵も感じさせないように、笑みさえうかべることも「仕事」のひとつ。その足元は一度絡まったらほぐれそうもない色とりどりのリリアンの糸のよう!
センターで、或いはバーに助けられながらその複雑な動きの練習が繰り返されます。
経験したことのないものにとっては一見それほどエネルギーを消費するものではなさそうな? とんでもない!踊る方にとっては額に汗するまさに切磋琢磨の右足と左足のバトルトーク!・・・でしょう。

Allegro・・・音楽用語の辞書では「軽快に、速く」。
ピアノを弾かれる方ならアレグロと言う言葉に、爽やかな疾風の如きスピード感を指し示すイメージを抱かれるでしょう。ピアノの楽譜で言うなら16分音符が黒アリの行列の如くびっちりと五線を埋め尽くし、指は目にも止まらぬ速さ(!)で白と黒の鍵盤上を行ったり来たりと動き続け、爽快かつ流麗に音が流れていく・・。

ショパンの「幻想即興曲」はAllegro Agitatoです。その音楽は何者かに駆り立てられるように抑えられない激しい感情を伴って進んでいきます。モーツァルトのいとも愛らしいピアノの名曲「きらきら星変奏曲」の最後はAllegroで、颯爽と晴れやかに終わります。

さて、稽古場ピアニスト初心者にとってはこのバレエのアレグロ系の動きというのがなかなかの曲者でした。
畢竟そのステップときたらじっと見ているとこちらの目も頭も混乱するばかりの絡まりそうな動き!それに合わせようとしてもタイミングが掴めないのは未経験者としては当然です。1と2と・・という2拍子の曲、或いは8分の6拍子を大きく2拍子にカウントするように弾いたりするのですが・・。下手にあわせようと思って弾くと安定感を欠いた演奏になり、手には冷や汗がじと・・・。でもって益々訳がわからない!
ここは経験の積み重ねが確かに必要なところでしょう。とりあえず落ち着いて、間違ってもサラバンドのような荘重な曲は選ばなければ大丈夫・・と。

稽古場での演奏に慣れない頃にはどうもそのAllegroという言葉に翻弄されていたようなのです。音楽でのAllgroのテンポ感とバレエのスッテプの総称としてのアレグロとの違いがもうひとつ飲み込めなかったのですね。
頭の切り替えができず、アレグロといったら速いテンポで弾かなければいけない!という思い込みに支配され、焦燥感ばかりが先に立ち・・。
横目でステップを睨みながら、緊張で身を固くし、自分の頭にあるアレグロと今弾くべきアレグロのギャップに息を詰めて窒息しそうになりながら鍵盤に向かったものです・・。さぞかし踊りにくかっただろうなぁ・・嗚呼みなさんごめんなさい!

そんな焦って速いテンポで弾かなくてもいいんだぁ〜、とゆとりを持てるようになったのは・・・言うのもはばかられるくらい後々のことです。

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