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5 憧れ

バレエは憧れの世界でした。古い話ですが、幼い頃ソノシートのレコードで聴いていたチャイコフスキーによる「白鳥の湖」の解説書にはボリショイバレエ団あたりでしょうか、4羽の白鳥やほの暗い森の中、白鳥達の群れが浮かび上がるようなコール・ド・バレエが至極遠景で写ってる写真がありました。それは今でも鮮明に思い起こせます。バレエへの憧憬はそういったチャイコフスキーなどの音楽をきっかけとして芽生えていったものです。ただ、その頃から少々ませていた私の興味を強く惹くものといったら、踊ることより、バレエの諸々のディテールの放つ、この世のものならぬ美そのものにあったと言えるのかもしれません。王子様とお姫様の甘いストーリーを追うことよりも、瞬間で捕らえられる美しい色や輝きにあったと言ってもよいかもしれません。

憧れの対象は、ピンクのトウシューズの艶やかな光沢であったり、ふわりとした長めのロマンティックチュチュの波打つような柔らかさだったり、瞬間を切り取られた写真に見ることのできるバレリーナの少し哀しげな横顔だったり・・。しつこくも重ねて言うならさらにその爪先だったり高く張った甲だったり、もの言いたげな指先だったり。
少々フェティシズムめいていますでしょうか?でも、おそらくこのような嗜好ゆえでしょう。今稽古場で飽かずピアノを弾き続けているのは。

私はおよそスポーツとは縁のない人間です。走るのは遅く、歩くのなら速いのが自慢というくらいですから!バレエを習ったこともないのです。バレエのピアノを弾くのにはやはりバレエを自ら体験し、熟知し、しかもピアノの腕が一級品でなんでもござれ・・というのがそりゃあ良いでしょう。理想です。でもだからと言ってバレエの経験のない人が弾けないかというと、それはそう短絡的な話ではないはずです。経験のない人でも興味関心が大きければそれは経験のなさを補って余りある努力に結びつくはずです。

運動全般への苦手意識が強い私にとって、ピアノを弾くには運動神経が良い方が・・などという話が出ようものなら、それは単に個性の違いというものよと一蹴してさっさと話題を変えたくなります。確かに反射神経が良いに越したことはないでしょうし、敏捷性に富み指が器用なのに越したことはないのですが・・。運動神経の優れた人はそれなりに、そうでない人はそうでない人なりに、です。

ところが・・憧れの世界だったバレエのレッスンとは実はまさしく筋肉を鍛えることだった!
のほほんと思い描いていた美しいバレエの稽古場でのレッスンの現実は、スポーツと結びつく要素が大きいものなのです。・・と気が付いた時は驚きでした。
誤解を恐れず言わせていただくなら、おそらくバレエのレッスンは広い意味での筋肉の鍛錬と言い換えて過言ではないはずです。勿論、その先に表現すべき無辺際ななにものかを見据えてという大前提があってのことでしょうけど。

・・・・そんな私のような運動音痴のバレエピアニストでも比較的すんなり入っていけるのが「アダージオ」の動きです。緩やかな音楽に乗って上半身を存分に使って語りかけるような・・・。

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